訪問介護大手「コムスン」の度重なる不正と、介護事業からの撤退は、社会に大きな波紋を投げかけた。
民間企業に門戸を広げた介護保険制度に対しても、「儲(もう)け主義は介護になじまない」「営利と福祉事業は両立するのか」といった声が上がっている。
介護保険と、適正な「介護ビジネス」のあり方について考えてみた。
「株式会社導入はよほど慎重に議論しないと、今度のようなことが起こる。何でも規制緩和して民間に委ねていいのか」
グッドウィル・グループが、子会社コムスンの事業をグループ内の別会社に譲渡すると発表した翌日、6月7日の自民党・伊吹派総会。
伊吹文部科学相は強い口調でこう発言した。
介護保険制度では、在宅サービスの提供主体となる要件は「法人であること」で、「営利」「非営利」は問わない。
原則、非営利に限られている医療保険に比べると、規制は緩やかだ。
「まずはサービス量の確保をという思いがあった」。
国の制度設計にかかわってきた大森弥(わたる)・東大名誉教授は振り返る。
「多様な民間参入により、夜間や休日のニーズにも応えられる。サービスの質は、事業者間の競争により確保できるとの結論に達した」という。
思惑通り市場は急速に膨らみ、在宅サービスの柱である訪問介護事業所数は初年度の約2倍の2万か所を超えた。
うち、開設主体が営利法人の事業所の割合は54%。
もはやなくてはならない存在となっている。
ただし、昨年までに指定取り消し処分を受けた161の訪問介護事業所のうち、9割近くを営利法人の事業所が占め、不正件数が多いのも事実。
「介護は人件費比率が高く、利益も上げにくい。株式会社を否定はしないが、配当や儲けを第一に参入すると問題が起きやすい」とNPO法人「市民福祉団体全国協議会」の田中尚輝専務理事は言う。
一方、「問題は、利用者本位のサービスで利益を出しているかどうか。株式上場すれば、かえって法令順守の意識が高まる面もある。営利、非営利で善悪を区別すべきではない」(田中滋・慶応大大学院教授)「ルールに甘い事業所は、NPO法人などむしろ非営利に多い」(神奈川県内の福祉関係者)との声もある。
営利であれ非営利であれ、不正は利用者に大きな不安を与え、公金で運営されている制度への信頼性も損なう。
介護ビジネスが適正に行われるにはどうすればよいのだろうか。
「悪質事業者排除のため、指導や監査にあたる自治体がもっと積極的に対応すべきだ」と、日本社会事業大専門職大学院の藤井賢一郎准教授は言う。
特に保険者である市町村が果たす役割は大きい。
埼玉県和光市では、支援が必要な高齢者に対し、民生委員や消費生活相談員らも含めた「コミュニティケア会議」を開催。
多数の目が事業所に注がれるため、「『不正はできない』との雰囲気作りに役立っている」という。
保険者による研修強化を挙げるのは、川崎市社会福祉協議会地域包括支援センターの中澤伸・調整課長。
経営者から無理難題を言われた時、運営基準を根拠に断る能力を身につけられるよう、事業所の管理者を対象とした研修を提案する。
ケアマネジャーのあり方の見直しを求める意見も多い。
ケアプランを組み立てるケアマネジャーは、不正を知りやすい立場にあるが、ケアマネジャー自身、つながりのあるサービス事業所の収益があがるようなケアプランを組み立て、利益誘導しがちとの指摘がある。
「サービス事業者から独立させた上で、専門性を高めることが必要。独立には報酬アップが欠かせない」と、服部万里子・立教大教授は言う。
東京都稲城市の石田光広・高齢福祉課長も、「市町村または第三者機関の所属とし、一定の給与を保障する代わりに責任や義務も負わせる公務員的な存在にしてはどうか」と意見を述べる。
2007年7月3日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/kyousei/security/20070703ik0b.htm
介護業界にとってコムスン撤退の影響は計り知れないほどのデカさがあります。
記事にもあるように「民間参入」が決まった時点で、何らかの機関が規制を厳しくチェックする必要がありました。
国も民間参入は医療や介護に関する支出を抑制するためにかなり期待をしていたハズです。
それなら事前に不正防止策を準備しておかなくてはなりません。
しかし、もう「たら」・「れば」では遅いんです。
起こったからには緊急に対応してほしいものです。
日本中に困っている要介護者や要支援者がいるのですから・・・・。
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