2000年4月1日に公的介護保険制度が始まって、丸7年が経った。
ご存じの通り、介護保険法とは、高齢者への介護サービスを、医療保険とは別に、税と保険料の両方を財源として行うことを定めた法律である。
福祉と医療に分かれた従来の制度を再編し、利用しやすく、公平かつ効率的な社会保障システムを構築することを目的とした。
それまでの高齢者福祉は、介護サービスの質・量ともに十分でなかったり、所得に応じた利用料負担が大きかったりといった問題があり、利用者の不満が大きかった。
介護を目的とした一般病院への社会的入院も多く、医療費増大の一因になっていた。
だがいま、介護サービス利用者は介護の必要性と要介護の度合いに合わせて、サービスを自由に選択できる。
利用料は全員が原則1割負担となり、低所得者に配慮しながらも公平な負担となった。
そういう点では、確かにこの制度によって、わが国の介護問題は1歩前進したと思われる。
しかし、果たして介護保険制度によって、日本の介護は充実したのだろうか?
そして、将来にわたって介護サービスは安心なのだろうか?
私は、実はこの介護保険法が施行されるほんの数年前に、両親の介護の問題に直面した。
その体験を振り返りながら、制度施行から7年が経つ現在の高齢者介護について考えてみたい。
◇ ◇ ◇
介護保険制度施行から7年、介護の現状はどう変わったのだろうか?
私が初めて介護の問題に直面したのは1997年の春のことだった。
小柄だが元来働き者でしっかりしていた母が、「何度も同じ事をきく」「鍋を火にかけたことを忘れる」「料理を戸棚にしまう」などの奇行をし始めた。
当初は「しっかりしてくれよ」などと笑い事で済ませていたが、やがてそれらの行動はエスカレートし、日に日に深刻になっていった。
心配になり病院に連れて行くと私たち家族が一番恐れていた診断結果が出た。
アルツハイマー病である。
この病気の進行は早い。
鏡に映った姿を自分自身と認識できず意味不明の言葉を叫ぶ、夜間に徘徊する、といった状態になるまで、そう時間はかからなかった。
そんな母の姿に、私は愕然とするばかりだった。
しかし、悲嘆に暮れている暇はなかった。
さらに問題が起こったのだ。
これから母の介護をどうするかという、まさにその時に、頼りにしていた父までもが脳梗塞で倒れてしまったのだ。
さすがに目の前が暗くなった。
父さえ元気で家にいてくれれば、当時独身サラリーマンだった私も認知症の母を任せて日中は仕事に出掛けられる。
しかし、その肝心の父が入院してしまってはどうにもならない。
母をどこか施設にとも考えたが、それには相応の費用負担がかかる。
しかも、父の入院費と合わせたらどれだけの出費となることか……。
バブル期のべらぼうな住宅ローンを抱えていたわが家には、到底無理な話であった。
実姉なども頼ってみたが、嫁ぎ先の事情もあって色よい返事はもらえず、やはりあきらめざるを得なかった。
結局は、これまで通り自宅で生活させながら、私がみるよりほかに方法はなかった。
そのころの私は某機械・通信メーカーの地域小売店に勤務していた。
バブル崩壊後の不況期にあっても業績は右肩上がりという、前途洋洋とした企業であった。
しかし、そういう事情で、会社の仕事にも支障を来すことになった。
当時、父は半年おきぐらいに脳梗塞の発作を起こしていた。
一度入院すると退院までは平均2、3週間かかる。
私はその都度会社に頼んで休暇をもらい、父の見舞いや家事などをした。
当時は介護休暇などという制度もなく、有給休暇は瞬く間に消滅し、あとは欠勤扱いだ。
それでも会社は私のそういった事情を汲み、配慮してくれた。
私も会社の恩に何とか報いるためにも、市の福祉課にヘルパーさんを紹介してもらったり、デイサービスを利用するなどして、できる限り仕事に出た。
しかし、無情にも母のアルツハイマーは着実に進行して行き、父の脳梗塞も入退院を繰り返すたびにどんどん重くなって行く。
結局は出勤と中期欠勤を交互に繰り返す羽目になっていた。
その結果、ある日とうとう会社から退職勧告を出され、私は職を失うことになった。
この先どう生きて行こうかと途方に暮れ、同時に私に降りかかったこの運命を呪ったものだった。
1999年の暮れ、介護保険制度施行の5カ月前のことであった。
(後編に続く)
2007年5月8日 オーマイニュースインターナショナル
http://www.ohmynews.co.jp/news/20070502/10702 より
上記のお話はいつ誰に起きてもおかしくない話です。
時期は介護保険制度施行前の実話ですが、読んでいてもこっちが胃が痛くなる内容です。
重なる時は何故か重なります。
「家庭の絆」・「家族の連携」が一番必要な瞬間の1つです。
この方のように一人で対応するしかないケースもたまに聞きます。
増して介護保険制度施行前なので、頼る制度がみつかりません。
介護保険制度が完全に良い制度とはいいませんが、このようなケースでは直ぐに利用することで介護者を少しはフォローできるのではないかと思います。
後編の制度施行後の話が楽しみです。
どんな展開になっていくのでしょう・・・・
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